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2019年度 事業報告

2019年度は、感染症と台風という二つの大きな災害に見舞われる中、これまで以上に職員が一丸となって利用者の命を守り続けた一年であり、多くの人々が賛育会と共に働き、支えてくださることを実感する一年でもありました。災害対応は、これからも続きますが、危機管理体制や地域連携をさらに強化しながら、地域の皆さまと共に復興を目指してまいります。以下、2019年度の概況を報告いたします。

基本聖句

「見よ、新しいことをわたしは行う。今や、それは芽生えている。」

(イザヤ書 43章 19節)

Ⅰ. 2019年度の大きな出来事

1. 台風19号被災

2019年10月に日本各地を襲った台風19号で千曲川が氾濫し、豊野事業所全施設の1階が水没しました。職員の適切な判断で、利用者は全員3階以上に避難して無事でしたが、空調や厨房等、1階設備が水没して生活機能を失い、全利用者に他施設、他病院へ避難していただきました。できる限り近隣の被災者にも寄り添いながら、事業所の復興に向けて、大きな資金を借入れるとともに、一期工事を経て2019年末から一部事業を再開し、全体工事完了と事業再開は2020年夏を目指しています。

2. 新型コロナウイルス感染症

2019年末に中国で発症した新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、日本でも2020年2月以降、各地でクラスターが発生し、政府や自治体が外出自粛を呼びかけて学校を休止したにも関わらず、感染拡大は続きました。賛育会でも感染予防と対策を強化して事業を継続しましたが、対応の長期化は賛育会だけでなく社会全体を疲弊させ、感染と共に経済的な不安も広がっています。厳しい状況が続いていますが、法人内各施設では、利用と地域の人々、そして職員の命を守ることを最優先にしたサービス提供を2020年度も継続しています。

Ⅱ. 役員等

1. 第1回評議員会(6/21)で次の方々が役員として選出され、引き続き行われた第2回理事会(6/21)において、理事長及び常務理事(7/1付)が選出されました。

理事・監事任期:2019年6月〜2021年年度決算に係る評議員会開催の日まで
* 2019年6月〜2020年年度決算に係る評議員会開催の日まで

理事長
小堀 洋志
常務理事
中村 基信
理事
  • 岩見 宣治
  • *島田 茂
  • 鈴木 正明
  • 髙倉 鉄夫
  • *髙本 眞一
  • 藤田 寿彦
  • 柳沼 恵一
(以上理事9名)
監事
  • 弥永 真生
  • *山田 公平
(以上監事2名)

2. 第2回評議員会(11/23)で新監事が選任されました。

新監事任期:2019年11月〜2021年年度決算に係る評議員会開催の日まで

監事
  • 阿部 誠

Ⅲ. 経営方針ごとの概況

1. 賛育会存立の基盤である「地域に仕える」ことを見つめ直し、地域・社会貢献活動を更に強化する。

  1. (1) 子ども食堂や幸腹食堂、いのちの授業、日本語教室等、施設毎に地域貢献活動を継続することができました。ボランティア発掘にも努めましたが、新型コロナウイルス感染症対策のため、年度末には地域活動を休止しました。
  2. (2) 2019年に墨田区が設置した墨田区社会福祉法人連絡会の構成法人となり、地域活動に関する情報交換会に参加し、顔の見える関係作りを始めました。
  3. (3) 年末年始に横浜YMCAが主催するミャンマーボランティアの旅に3名の職員を派遣し、現地で介護研修会を開催して介護という概念の普及に努めることができました。
  4. (4) 台風19号による千曲川の氾濫で被災した豊野事業所近隣住民のために、がれき撤去や清掃を手伝う職員ボランティアを派遣した他、被災者の居場所であり支援活動の拠点となる「ぬくぬく亭」を他団体と共同で立ち上げ、運営することができました。
  5. (5) 墨田中央事業所で行ってきた留学生支援活動の中から、介護福祉士国家試験に合格し、卒業した留学生を賛育会の正規職員として採用しました。
  6. (6) 賛育会後援会にお支えいただき、賛育会病院建替えのためのヴァイオリンとゴスペルのチャリティーコンサートを2019年10月25日にすみだトリフォニーホールで実施しました。1302名の地域の方々が来会され、益金 4,456,919 円の他、豊野被災復興支援募金をいただきました。
  7. (7) 賛育会後援会を中心とした発起人により、豊野事業所復興支援募金を10月〜3月の間で行い、1,024名の方々からクラウドファンディング1,354,000円を含む合計 ​55,696,552円の募金が集まり、復興に用いることができました。

2. 社会状況の変化や諸制度の変更を考慮しつつ、今後の事業計画を策定する。

  1. (1) 下半期に3カ年計画アクションプランの評価を計画していましたが、豊野事業所台風被災と新型コロナウイルス感染症対応により、次年度への継続課題となりました。
  2. (2) 賛育会病院移転新築計画は、台風被災によって大きな資金借入をするため、大幅な見直しが必要となり、次年度への継続課題となりました。
  3. (3) 介護医療院とよのは台風被災により下半期は休止し、賛育会クリニックは被災直後から仮設備での診療を再開していますが、いずれも次年度中の復旧を目指しています。また、平屋建てのグループホームさんいくの家は全てが水没して災害復興助成による現状回復工事では安全性が保たれないことから、利用者を豊野事業所内他事業で受け入れ、グループホーム自体の復興は断念せざるを得ませんでした。
  4. (4) 東海診療所は新しく医師を迎え、建物を新築して、2019年6月から健康診断と総合内科を通じて地域医療貢献活動を再開しました。
  5. (5) 清風園の大規模修繕を実施することができました。
  6. (6) 清風園でナイトサポート事業を開始しましたが、人員の確保が難しく、年度末で休止としました。
  7. (7) 保育園保護者を対象にして10月に井上さく子氏(新渡戸文化短期大学非常勤講師)による子育て支援後援会を実施しました。
  8. (8) 高齢者施設ごとの地域ニーズに対応して総合事業を継続しています。
  9. (9) 現在、指定管理を受けている中央区特別養護老人ホームマイホーム新川の次期(2021年4月〜2031年3月)指定管理公募に申し込み、審査を経て次期指定管理法人として指定を受けました。
  10. (10) 8月に墨田区ぶんか高齢者支援総合センターを移転リニューアルしました。また、町田市鶴川第1高齢者支援センターの2021年度から5年間の委託契約を更新するとともに牧之原市地域包括支援センターも2020年7月からの受託を決定しました。
  11. (11) 3年間にわたるマイホーム新川の大規模修繕を完了しました。

3. サービスの基盤であるケアの向上、法人内での標準化や統一に継続して取り組む。

  1. (1) 「認知症ケア」の充実を図るため、職員研修を継続実施しました。
  2. (2) 「持ち上げない介護」をさらに拡大、発展させるため、介護・リハビリが協働して研究と研修を実施しました。
  3. (3) 「SEAP(賛育会調査研究・実践事例発表会)」を実施し、7件の発表がありました。新規事業に関する発表に偏らないよう、次年度以降は研究や改善発表の在り方を見直します。
  4. (4) 「賛育会ホスピタリティ」の確立に向けて、接遇やケアの向上に引き続き取り組んでいます。そして、賛育会クレドを達成するためのベーシックを策定し、利用者、患者等との基本的な接し方や態度、職員同士の関係性づくりの指標としました。

4. 人材の確保と育成を、最重要課題と位置づけ、知恵と力を結集して取り組む。また、職員や関係者が共有すべき価値を明らかにし、その実現に努める。

  1. (1) 賛育会の理念や働いている人の思いを伝えるパンフレットやビデオを作成し、採用活動の強化や情報発信に努めました。
  2. (2) 通年型採用を進めましたが、夜勤可能な職員の採用が年間を通して困難でした。正職員の離職率は前年(10.77%)並みの11.06%で、社会福祉法人の平均離職率14.1%(福祉医療機構)を下回っています。非常勤の離職率は16.98%で、前年から約2%(22名)改善しました。
  3. (3) 医療・福祉・保育の人材育成学校を訪問し、顔の見える関係づくりを継続しました。
  4. (4) 全施設で実習受け入れ強化を図りましたが、第4四半期から新型コロナウイルス感染症の影響があり、受け入れ中止を余儀なくされました。
  5. (5) 他法人・団体と人材交流や研修を行うと共に、法人内出向(短期間の人事異動)を実施し、多様な価値観・視点を持つ総合的な人材の育成に努めました。
  6. (6) 障がい者雇用のために業務分掌と労働環境を見直しましたが、雇用拡大には至りませんでした。次年度への継続課題です。
  7. (7) 採用担当者連絡会を開催し、働き方改革や新しい人事ソフトへの情報を共有して理解を深め、職員の労働環境改善に努めました。

5. 中長期設備投資計画を策定すると共に、業務の合理化や省力化と経費低減に取組む。

  1. (1) 施設ごとに設備投資計画を策定して実施しましたが、施設や設備の老朽化にともなう緊急対応等が増えており、次期中期3カ年計画の中で法人としての中長期設備投資計画を策定します。
  2. (2) 賛育会病院は、医療体制や病棟編成、職員配置や電子カルテの見直しなどの合理化に努め、年度予算を達成することができました。また、今後5年間を見据えた設備投資計画を策定し、実施しています。
  3. (3) 財務ソフト、人事ソフトや記録ソフト、会議システムなどを見直し、業務の合理化と省力化に努めました。

6. 諸事業や地域活動を円滑に推進するために、組織・運営体制を再整備する。

  1. (1) 評議員会、理事会を中心とした組織運営体制の継続とホームページでの財務諸表公表等により事業運営の透明性も継続しています。また、運営監事が全施設を訪問し、内部管理体制を点検しました。
  2. (2) 新人事制度・賃金制度検討委員会で制度変更の検討を継続しましたが、2019年度は働き方改革と介護職員等特定処遇改善加算への対応を優先することとし、就業規則と賃金規程準則を一部改訂しました。
  3. (3) 委員会や担当者会で業務改善や研修を進めましたが、下半期の度重なる災害により、予定していた職種間や施設間の交流や研修を一部中止、延期しました。
  4. (4) 広報委員会中心の情報発信に努め、San-iku通信と賛育會ニュースの年間発行及び各施設のパンフレット改定などを進めました。

7. 事故防止、感染症対策等リスクマネジメントの強化を継続して行う。

  1. (1) 各施設で定期的に防災訓練や避難訓練を実施しました。特に10月の豊野事業所の台風被災時には、日頃の訓練に基づいた職員の適正な判断と避難行動により、利用者は一人の怪我も無く、避難することができました。また、被災には至りませんでしたが、東京清風園でも洪水対応計画通りに利用者の避難と地域住民の避難受け入れを行うことができました。
  2. (2) 賛育会病院の感染症コントロール専門医師(ICD)や看護師(ICN)による定期的な法人内施設点検を継続して実施しました。全施設での感染症対策により、今年度はノロウイルス・インフルエンザ等の施設内感染は1件もありませんでした。また、新型コロナウイルス感染症対策ではICD、ICNの協力のもと、危機管理委員会と法人感染症対策員会で策定した対応策を基に、各施設で随時感染症対策員会を開催し、感染予防と対策を実施しました。
  3. (3) ハラスメント防止対策として、役職者を対象に全事業所で、弁護士によるハラスメント予防研修会を実施しました。
  4. (4) 弁護士監修の下で改正した利用者との契約書や同意書などの書式を一部施設で試行しました。
  5. (5) 豊野事業所の台風被災について、災害対策本部及び危機管理委員会を設置し、避難から復旧、地域支援活動を含めた復興について、法人全体で取り組みました。

8. 賛育会創立100周年記念行事に取り組む。

  1. (1) 100周年記念実施期間の最終年度として、各施設のお祭りやイベントで100周年コーナーを設け、パネルによる歴史展示、募金やグッズ販売等を行い、賛育会の魅力の発信と支援者の輪を広げる取り組みを行いました。
  2. (2) いくつかの介護・医療系雑誌や新聞で賛育会100周年を取り上げていただき、100年の歴史と意義を分かりやすく広報しました。

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